
吾輩は名無し猫である。
吾輩は名前があろうがなかろうが気にしたことなど一度もない。
すかす、「社会的ステータス」で不遜にも生き物の価値を判断する人間たちのために言っておくが、
吾輩は人間界に自我の拠り所のない猫というわけではない。
吾輩は、「株式会社SOSEKIの社長」を名乗る主に会社のマスコットキャラとして任命された者である。
創業したばかりの社長がブログを書くことはよくあるが
なんでもこの社長、ちょっと変わったエッセンスを入れないと気が済まないらしい。
「データを扱う会社なんだから、固いイメージの方がいいよ」
「法人向けの営業があるのに、こんなブログで大丈夫?」
という周囲の真っ当な意見をのらりくらりと交わし、
結局、このようなふざけた、かつ、誰かに怒られそうなブログを
吾輩を矢面に立たせて始めてしまったのである。
なんでも創業の様子とか、社会やテクノロジーについて考えたことを
ボチボチ投稿していくと言っているが、
結局グルメとお酒の記事ばかりになるのではないかと吾輩は危惧している。
株式会社SOSEKIとは、今年1月に設立したばかりの、
「機会学習などでも必要になる"情報・ビッグデータ"を取引する場の提供」
を目指す会社らしい。
主が繰り返し、なにやら話しているのだが、吾輩はこう理解している。
例えば、近隣の魚屋は夕方になると吾輩に魚のお頭を献上するのであるが、
ここのところ、吾輩の好むサンマがめっぽう減ってしまった。
そこで「仕方ない、今日もアジで勘弁してやろう」などと胃袋をアジモードにしていると、
サンマが出てきたりする。
こうなると、意外にもサンマが喜べないものである。
そこで、「去年の今日はサンマ、一昨年の今日もサンマ」と知っていれば、
「今年もサンマであろう」と予測ができ、サンマにそなえてオヤツを我慢するなど、
万端な準備ができる。
ところが、肝心の「去年の今日はサンマ、一昨年の今日もサンマ」といった話は、
寝てても入ってくるものではない。
こういった話は吾輩の近隣に住む長老猫さんしか知りえないものであるが、
365日、長老猫さんに一方的にお世話になるのもかたじけない。
そこで、吾輩は長老猫さんにお礼に昼寝時間に縁側を提供することにしている。
猫界ではこのようなことを「助け合い」と呼ぶのであるが、
人間というものは助け合いの価値を金に換算して損得を確認しないと気が済まないらしく、
「情報売るよ」「買うよ」という「売買」になるらしいのだ。
ところが売る人と買う人がてんでバラバラに存在しているのだから、仕方ない。
そういう人たちが「全員集合」する場所を作ろう!というのが主と創業メンバーの思惑らしいのだ。
この創業メンバーというものもなかなかのくせ者で、
穏やかな外見・言動で外界と調和しているように見せかけて、
頭の中が自由なのだから、吾輩の生活も落ち着かないのだが、
こちらの苦労も後々語っていこうと考える所存である。
ちなみに長老猫さんによると、「去年の今日はアジ、一昨年の今日もアジ」。
何やら今日はアジになる予感である。
アジなどというのはありふれた魚であるが、
食べられるだけで仏様に感謝すべきであろう。
ありがたいありがたい。
(代筆 by 社長)